自己破産とは

こんにちは。弁護士の奥田です。

今日は「自己破産とは」ということで、自己破産について簡単な説明をしてみたいと思います。

 

自己破産とはどういうことかというと、非常に簡単に乱暴に言ってしまえば、ある人が持っている財産を全部お金に換えて、これを債権者に配当・分配します。足りない部分はチャラですよと、これを”免責”と言うんですけれども、こういうことを指して『自己破産』といいます。

”自己”というと、借金を負ってる人が自分で破産の申し立てをする、自分で裁判所に破産を申し立てするのを”自己破産”と言いまして、これと対比される話としては”債権者破産”といって、債権者の方からある人を破産させるという場合もあります。それは今回とは関係ないので置いておきますけれども、今日説明するのは、この『自己破産』についてです。

もう一度言うと、持っている財産、ある人が持っている財産を全部お金に換えて、これを債権者に分配・配当をしますよと。それで足りませんねと言う場合は、足りない部分についてはチャラになりますと。簡単に言うとこういう話が自己破産ということになります。

 

自己破産をするときによく誤解している人がいます。私が弁護士として相談をお受けする中で、結構多くの人が誤解していることとしては、このようなものがあります。

 

浪費やギャンブルでは破産できない

まず一つは、浪費とかギャンブルが原因で自分は借金ができたので、こういう場合は破産ができないというふうに思い込んでおられる方がいます。これは正しくありません。浪費やギャンブルでは破産できないというのは正しくなくて、浪費やギャンブルが原因で借金ができたという場合でも、さっきの破産して免責を得るという可能性がないわけではありません。ですのでこういう場合でもきちんと弁護士に相談して検討してみるということが大事だと思います。

 

全財産が取られてしまう

それから、全財産が取られてしまう、もうすっからかんになってしまう、と思っておられる方もいます。そこは必ずしもそうではなくて、例えば99万円までの現金とかは持っていてもよろしい、取られることはない、ということになっています。ですので、全てすっからかんになるということではありません。

 

家を追い出される

それから、家を追い出されてしまうというふうに思っておられる方もいます。例えば家が自己所有の場合は、家を手放さないといけないということもありますが、これもたちまちもう来月出ていけという話になることはありません。

最低数ヶ月ぐらいの余裕はありますから、そういう場合でも直ちに追い出されるということはありませんし、それから借家に住んでますというような場合には、基本的にはそのまま賃料を払って借家に住み続けるということは十分可能です。

 

両親、家族の財産がとられてしまう

それから、両親とかあるいは家族ですね。お子さんだとかあるいは奥様・ご主人、両親や家族の財産まで取られてしまうというふうに考えておられる方もいますが、これも違います。それぞれの方の財産はそれぞれのものですので、あくまでも破産をする方の財産、これがお金に換えられて配当の対象になるというだけで、ご家族のものが取られるということは基本的にはありません。

 

これに関して、破産をすると奥さんに迷惑をかけるから離婚をしますという方がおられますけれども、むしろ離婚をした場合の方が、財産関係がややこしくなるというか、問題が出てきますので、むしろ離婚はせずにそのまま破産をした方がいいという場面が多いと思います。

 

 

生活保護や年金がもらえなくなる

それから、生活保護を受けておられる方、あるいは年金で生活しておられる方が、生活保護で破産をすると生活保護が支給されなくなるとか、あるいは年金がもらえなくなるんじゃないかということを心配される方がいますけれども、これも大丈夫です。生活保護が受け取れなくなるということはありませんし、それから年金についても基本的には大丈夫です。

 

戸籍に載る

それから、”戸籍に載る”。破産をすると戸籍に載っちゃうんじゃないですかというふうに思っておられる方がたまにいます。この話の出所がどこなのかよくわからないんですけれども、そんなことは一切ありません。戸籍に載ったりすることは一切ないので、例えば自分のお子さんとかお孫さんが将来戸籍を取ったときに、お父さんやあるいはおじいさんが破産したんだということがわかるかというと、それは絶対にわかりません。戸籍に載ることはありません。

 

他人に知られてしまう

それから、他人に知られてしまうんじゃないかというふうなことを心配される方がいますけれども、基本的にはここも大丈夫です。破産の事実を知ることになるのは、債権者は知ることになりますけれども、それ以外の他人に知られるということは基本的にはないと思っていただければいいと思います。

 

今、だいたい毎年破産の申立て件数は6万件から7万件でこの10年ぐらいは推移していると言われています。そうすると、10年ぐらいで累計を取ると60万件とか70万件の破産の件数があるわけですけれども、通常皆さん方、破産をした人っていうものを見ることはないですよね。あの人が破産したとかいうことを知る機会はあまりないと思います。ということは、要するに知られていないということになるわけです。破産したことがある人というのは世の中にいっぱいいるはずなんですけれども、あの人がそうだとか聞くことはほぼないと思われますので、他人に知られてしまうという心配も基本的には大丈夫だと思います。

 

会社をクビになる

それから、会社をクビになっちゃうというふうに思われる方がいますけれども、これもありません。会社に知られることは基本的にはないわけですし、会社から借り入れをしているという場合には会社が債権者になりますから、そのまま破産をすると、会社に知られるということになりますけれども、この場合も弁護士に相談すればいろいろ知恵がありますし、それから仮にその会社に知られたとしても、破産をしたということを理由に会社をクビになるということは、基本的には法律上非常に難しいんじゃないかと思われます。

 

公務員になれない

それから公務員になれないと思っておられる方もいますけれども、これも基本的には大丈夫です。将来公務員になるということについては、破産をしたからなれないということは基本的にはありません。

 

銀行口座が持てない

それから、銀行口座が持てないというふうに思っておられる方もいますけれども、銀行口座も持っていて全然構いません。新しく銀行口座を作ることも十分できますし、ここも全く問題はないということになります。

 

ブラックリストに載って、一生カードが作れない

あと最後に、ブラックリストに載って、一生カードが作れないというふうに思われる方もいますけれどもこれも違います。

ブラックリストというのはいわゆる「信用情報」ということだと思いますけれども、確かに破産をすると、5年から7年ぐらいの期間、その履歴が信用情報として、金融機関なんかが共有している情報の中に載ってしまうということはありますけれども、金融機関側もあまり古い情報を持っていても仕方がないので、通常5年から7年で更新するというか、古い情報は消していると言われていますので、一生カードが持てないとかそういうことはないということになります。

最後に、破産についての「誤解」まとめ

こういった破産についていろいろ誤解をされて、それが原因でなかなか自分は破産できないんだ、家族に迷惑かけちゃいけないからということで思い悩んでる方がおられますけれども、そんなことは全然ありません。

 

もちろんお金を借りて返さないといけないということは、これは日本の法律ではそうなっているわけですけれども、「破産」という、先ほどのお金を借りても結局最終的にはチャラにできるという制度ですね、これも日本の”破産法”という法律で認められた制度です。

 

なぜこういう制度があるのかというと、返せないほどの借金を抱えてしまうと、これはもう結局どう頑張ったって返せない訳ですので、そうであればこれは債権者には泣いてもらって、一旦これを国がチャラにした上で、その代わりもう借金がなくなったらその日から新しく仕事を一生懸命頑張ってもらって所得税を納める、それから社会保険料を納める、というふうにしてもらったほうが国・社会全体としてはよほどプラスだという判断から、破産という法律があるというふうに考えられます。

 

ですので借金については第一義的にはやはり返すように努力をすべきだと思いますけれども、どうにもならないとなったときには、まずは弁護士などの専門家に相談をされて、今言ったような誤解をきちんと解いてもらって、再出発の道筋をつけていただければというふうに思います。

今日の話は以上です。

 

著者紹介

奥田貫介 弁護士

おくだ総合法律事務所 所長

司法修習50期 福岡県弁護士会所属

福岡県立修猷館高校卒

京都大学法学部卒