「(自己)破産」という制度の存在は多くの方がご存知のことと思いますが,この制度について正確でないイメージをお持ちの方も少なくないようです。ここでは,そのような破産に関する誤解のいくつかについてご説明いたします。
例えば,「家財・日用品まで根こそぎ持っていかれるのではないか。」とご心配される方がいらっしゃいますが,そんなことはありません。その時点で換金すれば20万円以上の価値があるような高価品については処分が必要となる場合がありますが,その他の家財・日用品の類を持っていかれることはありませんし,99万円までであれば現金も破産者が自由に使うことができます。また,破産手続開始決定後に得た財産についても破産者が自由に使うことが出来ます。
次に,「戸籍・住民票に記載されるのではないか。」,「周囲の人に破産の事実が知られてしまうのではないか。」といったご心配をされる方もいらっしゃいますが,戸籍や住民票に破産の事実が記載されることはありません。破産手続開始決定は官報に掲載されますが,一般の方が官報を見ることはありませんし,勤務先に破産の事実が通知されることもありません。自分から言わない限り,周囲の人に破産の事実が知られる心配はまずありません。
したがって,「会社を首になるのではないか。」,「就職・転職に不利になるのではないか。」といったご心配も,ほとんどの場合は問題ありません。但し,職種によっては,破産開始決定から免責許可決定が下りるまでの数か月間,資格制限を受けてしまうものもありますし,破産の事実が信用情報機関(ブラックリスト)に一定期間登録される結果,金融機関系の企業等への就転職が困難になる可能性はあります。
誤解に基づいて,破産による不利益について不必要に恐れるあまり、傷口を広げてしまうことは不幸なことです。お困りの際には,弁護士に相談の上,不安に思っていらっしゃること,分からないことを何でも尋ねてみることが大事です。きっと事態を解決する方法が見つかります。